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子供の笑顔が集う場所| Connecting the dots 福島からの言葉 vol 4

見えない放射線の不確かな脅威とどう向き合えばいいのか。漠然とした不安のあおりを強く受けているのは、とりわけ放射線によるリスクを心配されている子供達と、その両親だ。 そんな現地の親子両方の願いから生まれた『ふくしまインドアパーク』、そこに繋がる人々の言葉の記録。

取材・文:西山武志/撮影:栗原大輔

子供達のために外のように遊べる屋内施設を

幼い頃、よく雨なんか降らなければいいのにと思っていた。外でおにごっこやサッカーができなくなるからだ。雲ひとつなく晴れると、それだけで胸が躍った。そんな日に近くの公園に行けば、必ず友達に会える。あのとき“晴れているのに外に出られない”ことがあるなんて、考えもしなかった。
今、福島の子供達が外で遊びにくい状況下にいること、そしてその問題を解決しようと尽力している人々がいることを、皆さんはご存じだろうか。

img001 福島県南相馬市原町区。ほぼ全域が福島第一原発から30km圏内、一部が20km圏内の警戒区域に入り、原発事故により大勢の人々が避難を余儀なくされた町である。東京からこの町までの直線距離は、そう遠くない。しかし、津波の被害が大きかった沿岸部の電車の一部は運休したままで、その区間は代行バスが倍以上の時間をかけて走っている。今回の取材先の最寄りである原ノ町駅へは、新幹線・在来線・バスを乗り継いで行くこと5時間弱、長い道のりだった。

駅から出ると、快晴にも関わらず人影が少なかった。誰の声も聞こえてこない閑散とした駅前は、どこかもの寂しく感じる。この駅のちょうど裏手に『ふくしまインドアパーク南相馬』がある。子供達のための“室内公園”として、『認定NPO法人フローレンス』が地元住民の協力のもと、今年の8月にオープンさせたばかりの施設だ。中のフロアには、ブランコや滑り台、ボールプールなどの遊具が置いてあり、最近では公園でも見かけなくなった砂場も用意されている。フロアは全面に人工芝を敷いていて、子供達は園内いっぱいを裸足で走りまわることができる。

フローレンス・インドアパーク事業部の吉田邦彦さんは、現地の子供達を取り巻く状況について、こう語る。

「震災以降、放射線の影響を危惧(きぐ)して、こちらの子供達は外で活動することをずっと制限されてきました。学校でも、登下校でマスクの着用を義務付けていた時期もありましたね。最近では、全く外で遊んでいないというわけではないようですが、幼稚園や保育園などでは“外遊びは一日30分から1時間まで”など、時間で制限を設けている所が多いようです。家庭では、それぞれの親御さんの考え方によりますね。今でも放射線の問題が、完全に払拭されているわけではないですから」

南相馬市では今もなお、仮設住宅を含め市外に避難している人たちが少なくない。小さな子供のいる家族なら、なおさらだ。ただ、実家に祖父母がそのまま残っている家庭も多く、避難している家族も休みの日には定期的に南相馬に帰ってくる。インドアパークの利用者は現在、このような親子連れが大半だそうだ。

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「市外に避難している方々は、こちらに住んでいる方々よりも放射線に敏感なんですよね」と言う吉田さん。ここでの直近の課題は、施設の広報活動だと話す。

「最近になって、市内の学校や幼稚園、保育園を回って地道に宣伝活動を始めました。まだまだ認知されていないので、地元にこんな施設があるということを、まずはひとりでも多くの住民に知ってもらいたいです」

(2013.2.6)
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